平山建設のDX推進
V. 0.9 2022/4/14
建設業は2024年問題を抱えています。2019年4月に一般中小企業まで適用された働き方改革法が、猶予期間を経て全建設業に適用されます。2024年までに生産性を革新的に向上させ、働き方改革法に則った体制を整え、なおかつ競争力を失うことはできません。また、2025年問題とも言われる団塊の世代の75歳到達で、現場の働き手も大幅に減少することが見込まれています。こうした課題に平山建設では、DX推進により対応することを取締役会で決定し、全社で合意し、解決に挑戦しています。
①電話、移動、手戻り(コミュニケーションミス)をデジタル化、クラウドを使った仕事のやり方を取り入れて徹底的に減少させる。
参照 なぜ私達は忙しいのか? 社外説明版 20200529 (2019年3月作成)
②工事現場進行に必要とされる書類、写真等の作成、管理をGoogle Workspaceなどのクラウド上で行い、現場の負担を会社全体として共有することにより働き方改革を実現し、新たな競争力をつける。
③DXを協力業者等に広げ、現場担当者に集中しがちであった業務(タスク)を社内、外の人員にアウトソーシング可能な新しい建設の仕事の仕方に移行する。
DX推進により2024年問題後も、社員が安心して継続的に働ける魅力的な職場環境を作り、人財不足の時代を迎えても社員の定期採用が継続できるようにする。中小建設業でもできるDXを生かした働き方を確立する。
平山建設DX推進を実現するために以下のフェーズで推進します。
①Google Workspaceを活用したDXの教育と推進
現在、社内で4名いるgoogle appscript技術者を中心とした、社内研修の実施
②現場状況、情報の共有によりモデル現場における4週8休の実現
データ共有のメリットを生かし、現場従事者の勤務形態を固定勤務形態からシフト制へ移行することで、より効率化を図る
③AND PAD等を使った協力業者まで巻き込んだタスクの分散負担による働き方改革の実現
当社従業員だけでなく、工事にかかわる全ての人員に同様の働き方改革を行い、相乗効果が生まれる環境づくりに注力する
・基本的に仕事で使う資料は、全てクラウド化する。
・クラウド化した資料に基づき、現場担当者以外がサポートできるように仕事の「見える化」を進める。
・ITリテラシー、クラウド化、DX推進に関わる学習を全社員が受ける。会社としてITリテラシー、クラウド化、DX推進に関わる教育に投資する。
・DX認定取得、Google Workspaceを使いこなすための研修(01セミナー等)を中心とした社内でのDX推進の流れを醸成する。
当社におけるDXを用いた働き方改革の中心となるGoogle Workspaceの活用について、以下の取り組みを実施する。
①電話、移動、手戻り(コミュニケーションミス)を減らすために、Googleチャットをコミュニケー ションツールの主とする。現場での作業中の手を止めることなく、現場での作業工程を中心とした、
コミュニケーション形態を確立する。同時に、文字として記録を残すこともでき、後々内容の確認を
行う際にも有効に活用できる。
②工事現場進行に必要とされる書類、写真等の作成、管理においては、Googleドライブの利用を進め る。資料の閲覧に特別な機器や認証等を必要とせず、汎用性の高いスマートフォンやタブレット端末を 用いる事が出来るので費用対効果の面でも高い有益性が得られる。
同時に、昨今の非常に高いスマートフォンの普及率、及びGoogleアカウントの取得率を考慮すると、
協力業者間でのデータの共有においても、相手方に負担をかけず、使い慣れたシステムで最初から効率 よく導入も進められる。セキュリティの面からも、閲覧権限等の設定が出来るため、情報流失のリスク 低減にもつながる。
③DXを協力業者等に広げる点においては、Googleアカウントの取得がマストだが、先に既述したよう に、同アカウントの高い取得率がそのままメリットにつながる。
一方で、使いこなせていない機能等においては、当社の「生産性向上リーダー」より教育を行うこと で、社内での活用レベルに近いスキルを取得してもらう教育を行っている。
ほかに、オンラインでのミーティングツールmeetや、ドキュメント、スプレッドシート、スライドのようなオフィス系アプリ等をこれまで主流だったMicrosoftofficeに代わる位置づけで使いこなせる様に教育を行う等、Googleアカウントの取得が単なるスマートフォンを使うための手段から、業務効率の大幅な改善を行う手段へと育て上げるプロジェクトを、今後も継続していく。
・社員の残業時間、休日出勤数を法定の範囲内に収める。
過去3年間において時間外を全社平均で約39%削減。建設業界における2024年問題の対策として、
今後2年間でさらに現状より10%の削減を目標とする。
・Google Workspace等、現在利用しているサービスまたは資産を有効活用し、経費を削減する。
・ペーパーレス化を図ることで、環境負荷の軽減をする。
同時に、データをクラウド化し閲覧端末においても端末、Google Workspaceの2段階のパスワード認証 を必須としセキュリティ面でのリスク軽減も図る
・社長、担当役員を含む働き方改革委員会による各種施策、プロジェクトの検討、実施。
・「働き方改革課」を工事部内に新設し、現場のサポート、BPOの実施を行う。
・各部署毎、ITに精通した「働き方改革推進リーダー」を任命し、部署毎に必要となるスキルの向上を図る。同時に、好事例の共有を行うことで、全社へ波及効果を生じさせる。
私達、NaSPA平山建設は、「ふるさとづくり、街づくり、建物づくり」を使命として日々仕事に取り組んでいます。この使命達成のために千葉県成田市を中心に戸建、ビル、マンション、工場倉庫などの建築から不動産管理、ホテル運営の仕事をしています。地元の活性化につながる建築を続けることで成田の街が変わっていくのを実感しています。成田の表参道のセットバック事業では多くの建物の新築、改築を行わせていただき街づくりの一助となったと自負しております。街が変わるとそこをふるさととする方々が増えていきます。平山建設の賃貸マンションにご入居頂いたお客様がご結婚されたのちに、お子様が生まれ、平山建設で戸建てをご契約頂いたケースなどがあります。大変、やりがいを感じております。後述する人手不足、現在の世界的な原材料高・燃料費高の状況の中で、旧態依然とした仕事のやり方では使命達成はおろか、生き残りすら難しくなってきています。そこで数年前からGoogle Workspaceを使ったDXによる会社の変革に取り組んできました。
実際に中小建設会社のDXに取り組んで見て、以下の3ステップの取り組みが大原則であることを実感しています。
まずは「入り口」の「デジタル化」です。
どうしても、これまで建設業では紙の資料、手書きの記録、電話による連絡に頼りがちでした。そこで、Google フォーム、スプレッドシート等で入力するようルールを変更し、社内の教育を徹底することにより紙の資料、手書きの記録の80%以上をデジタル化することが出来ました。
また、電話による1対1のコミュニケーションから、Googleチャットを使った1対nでしかも、すべての記録が残る形での、同時多人数コミュニケーションに移行することで、これまで以上の効率がよく質の高いコミュニケーションとすることが出来た上に、それにかかっていた時間を90%以上削減することも出来ました。
入り口のデジタル化徹底による次のステップは「クラウド化」です。
これによりデータの共有が容易に行えるようになりました。例えば、70名以上の社員の勤怠管理、残業時間集計は、総務担当者が二日かかっていたのが、クラウド化することで入力のエラー修正や時間外の計算の自動化等も行えて、現在では二時間で終了するようになりました。
他に稟議書も、クラウド化しました。Google社にアカウント認証とスプレッドシートの変更履歴を信頼することでこれまで決済まで一週間以上かかっていたものが、現在では最短で1時間で済むようになりました。
実行予算書の認証・登録も、これまでは途中で行方不明になる等のリスクもあり、かつ承認まで最大一ヶ月かかっていたものが現在ではそういったリスクも無く、かつ承認まで数日に短縮されました。
Googleサイトを使って、各現場のポータルサイトを立ち上げ、建設現場の基本情報、工程表、基本的な図面等をGoogleのアカウント認証を使って協力会社の職長と共有する仕組みを作りました。
今後、「後工程はお客様」の精神で協力会社の職人さん達を「お客様」ととらえ、DX推進を呼びかけていきます。
具体的には、デジタルサイネージ等を現場に設置し、DX活用の有効性の宣伝、職人さんインタビューの掲示などを行い、現場の共感を深めて、協力体制を強化していきたいと考えています。
三つ目のステップは「データ活用」となります。
「データ活用」こそがDX(中小企業のDX)の要となります。「戦略」と呼ばれる大規模な計画の立案、実施は中小企業の手にあまる部分があります。中小企業においては、できるところからデータ活用をはかり、試行錯誤をすることで手探りながら労働生産性を向上させていくことが一番定着する手法であると思います。どうしても、中小企業においては下の図に示す労働生産性計算式の下の部分、「時短」、「効率化」、「コスト削減」に目を向けがちです。「売上UP」「採用好調」、「付加価値UP」にまで手がつけられてきませんでした。
平山建設でも、ようやく上段の要素に目を向ける試みが出てきました。
例えば、これまでの「スモールDX」の三つのステップのDXに加えて、BIM(Building Information Modeling)を導入することで効果をあげています。
ある大手製造業企業様の本社新築工事受注の例を説明します。DX、クラウドを使ってヒアリングした前提状況を詳細に共有し、遠隔打ち合わせを繰り返し、社内外のスタッフできめ細かい提案を作成し、効果的なプレゼンを行いました。更に、BIMを使った3Dウォークスルーにより、新築する本社のイメージをご担当者様と共有をしました。結果、中堅ゼネコンに競り勝ち、受注に結び付けられました。
後述のように、DX推進をアピールすることで、人手不足が深刻化する建設業において、技術職新卒を毎年3人前後定常的に採用できています。
引用元平山建設様
社長である私の使命である「社員の物心両面の幸福追求」は、生産性の向上と魅力的な職場づくりの両方のハードルを越えなければ実現できません。
大小を問わず、建設技術者の採用、育成は建設会社のライフラインであると言えます。採用、育成がうまくいかないと大きな機会損失が生まれます。
また、どうしても引渡前など、残業が増えてしまう傾向がずっと続いていました。DXにより建設技術者がより働きやすいように業務改革を推し進めることで、働き方改革に適合した働き方ができるようになってきました。具体的にはDX導入前とくらべて残業時間を平均して約40%程度減らすことができました。
DX推進により、地方の一企業に過ぎない平山建設が若い方々に魅力的な職場となり、お客様の「ふるさとづくり」につながる本来の使命を永続的に進められる見通しが立ってきました。
採用、育成を続け、永続的に使命を果たすことは、地元貢献でもあります。
以上の「スモールDX」について、社長のイニシアチブにより推進してきました。
例えば、DXの啓蒙、企画、推進、チェックの機能を果たす全社横断の働き方改革委員会活動を3年以上継続してきました。令和4年4月には、DX推進組織として働き方改革課を設置し、クラウド、ウェアラブルカメラ等を使い、現場と本社の「距離」を縮める活動の専任社員を置きました。社長自身も、不定期に「おはようございます」メールを全社員に送りDX進捗の共有と啓蒙を社長自ら行っています。
DXによる業務改革の先兵となり、地元密着による企業活動の活発化することは、日本の建設業の生産性向上の希望となり、建設業に働く方々の幸福追求にもつながると信じます。
代表取締役
平山 秀樹