このブログがほとんど読んだ本の記録になりつつあるのが怖いのですが(笑)。少々、必要があって構造の勉強をしなおしている中で再読しました。あらためてよい本だなと実感しました。
わかりやすい言葉で、建築の工程の進め方や構造の基本の考え方から、新しい工法の開発や世界の構造デザインの施工例まで入っています。
建築構造の再勉強をして、改めて建築の一番の基本は骨組みである構造にあるなと感じています。構造次第で建築物は実にさまざまな表現、さまざまな機能を獲得することができます。その事実を本書は非常にわかりやすく伝えてくれています。近年、内装のデザインや、付加的な機能である設備などが建物を評価する基準として重要視されていて、それはそれで現代において大事だと思うのですが、工学としての建築の本質は構造にあるのだと実感します。構造とは、建物の構造をどのように力が伝わっていくか、それをどう受け止めてあげるかなのだということが読み進むほどに分かってきます。
建築の構造の違い、材料の特性などもわかりやすく書かれています。本当は表やグラフを転載させていただいたきたいくらいなのですが、鉄骨や鉄筋コンクリートと比べても木材というのはうまくつかってやれば実にすぐれた材料であることもわかります。
「世界のマジックショー」と題した章では、シアーズタワーや、上海香港銀行、ドーム球場、新凱旋門などの世界の有名建築物がいかに力を使える構造体を見えやすくしているか、構造のマジックのタネ明かしを写真で教えてくれています。
できれば、最低限この本で書かれているレベルのことは、日本全国の高校生に授業で教えるべきではないでしょうか?耐震偽装の事件にしろ、現在日本の建設・建築業界が抱えている問題の根底には、あまりにも建築、建設関係の人間と一般の方とで知識、考え方に差があることが原因であるように思えてなりません。建築に興味を持っている方、マンションを買おうとしている方は、遠回りなようでも本書のようなごく基本から勉強されるべきではないでしょうか?
実は、この本を読んで、自分が小さい頃に「超高層のあけぼの」という本を読んで、建築に興味を持ったことを思い出しました。「超高層のあけぼの」は、それまで建物の高さが30mまでに制限されていた限界を、「霞ヶ関ビル」の建設を通して突破するというドキュメンタリーでした。これまでにない技術の限界に挑み、さまざまな工夫をつみかね、建物を完成させていく技術者たちの姿がかっこいいと思ったのを覚えています。父親に「超高層のあけぼの」で取り上げられた「霞ヶ関ビル」に連れて行ってもらったほどでした。子どもの頃のあこがれを改めて思い出し、ああ、本当に自分は構造への挑戦から建築の世界にあこがれたのだなと実感しました。
映画にもなったんですね。
本の方は、エレベーターコアの話とか、五重塔の柔構造の話とか、子どもにもわかりやすく工学的な叡智の発揮を解説してくださったいたように私の記憶には残っています。なつかしいですね。