地震と耐震補強
ということで、今回は建物の耐震補強について考えてみたいと思います。ちょっと宣伝が入っています(笑)。
■既存の資産を活かす!
先日、構造の勉強の一貫で「応答性能に基づく『対震設計』入門」という本を読みました。いや、正確に言えばあまりに難しくていまだに読了できていないのですが、序文に感動しました(参照)。
序文の中で著者の石丸辰治先生は、「最先端の工学的な手法である制震技術は貴重な資産である現在建っている建物を有効に利用することにこそ使うべき だ」という主張をされ、建築物こそ「3R(リサイクル,リユース,リデュース)」していかなければならないと書いていらっしゃいます。
応答性能に基づく「対震設計」入門 石丸 辰治 彰国社 2004-03 by G-Tools |
実は、日本には「既存不適格」と言われる現在の耐震基準を相当程度程度の耐震強度を持たない住宅が1000万戸以上あるといわれています(参照)。調査費用にいくつかの市町村では補助金がでるなどの場合もあるようですが、実際にはまだまだ進んでいません。歴史的建造物も含まれている場合もあります。耐震補強が進まない結果が大地震の度に崩壊事故となって現れています。
実は、既存建物の補強はなかなか難しい面があり、金物などを使った耐震補強でもせいぜい現在の基準をぎりぎり満たす程度がいいところだと言われてい ます。私は、大きな地震で木造の住宅が被害を受けるというニュースを聞くたびに既存の木造にこそ制震技術を使って耐震性能を向上させるべきだと感じてきま した。
そんな中で、石丸先生は制震技術の実用化、普及を目的とする「i2S2」という会社の設立にも関わられています(参照)。この会社では具体的に既存の歴史的建造物などの耐震補強を可能とする商品を販売しています。私はこの会社の商品で一般の住宅の制震化、耐震補強ができないか問い合わせをしてみましたが、まだ開発段階なのだそうです。
ちょっと余談ですが、既存の資産の有効活用という例では、以前このメルマガで橋の話をしましたが(参照)、石丸先生の技術を応用すれば、橋を建替えなくとも「落ちない」橋にすることができかもしれないという記事もたまたまみつけました(参考へ)。
■ハウスメーカー
「地震の振動エネルギーを熱エネルギーに変えて吸収してしまう」なんていうコマーシャルなどをご覧になった方もあるのではないで しょうか?既存不適格住宅の耐震補強が進まない一方で、ハウスメーカーさんたちは一般住宅の制震技術を実用化させています。これらを既存に応用できたらい いなぁと常々思っていました。しかし、ハウスメーカーさんが看板技術を一般化させることなどないだろうとあきらめていました。
そんなおり、たまたまミサワホームにお勤めの方とお話をする機会があり、私の思いを申し上げました。すると、なんかつい先ごろから一般木造戸建リフォーム用の制震技術応用商品、MGEO-Rが開発され一般に販売されているということを教えていただきました。
在来木造リフォーム用制震システム「MGEO-R」を新仕様に ミサワホーム
ミサワホーム株式会社は、在来木造リフォーム用の制震システム「MGEO-R(エムジオアール)」をこのほど新仕様に変更、同時に財団法人日本建築防災協会の「住宅等防災技術評価」を取得したと発表した。
(中略)
ミサワホームイングブランドによる耐震リフォームを推進していく他、他建築業者への外販も視野に入れていく。
@ 大屋さん読本 (強調は筆者)
このニュースには感動いました。
というのは、これは私どもの会社のような一般の会社でも飛躍的に木造戸建の耐震性を高める材料を使うことができることを意味するからです。
こうした技術が一般に普及して既存建物の制震化がすすめられるようにがんばっていきます。ミサワホームさんから技術供与をいただく話をしております。もしご興味があればぜひご連絡ください(お約束の宣伝でした) 。
■参考
ニュースサイト(現在はリンク不可)より
[200502150301]高架橋の交通振動を9分の1に/三井住友建設と石丸辰治日大教授が制振装置を共同開発
三井住友建設と日本大学理工学部の石丸辰治教授は、交通車両が高架橋を走行する際に発生する上下方向の揺れを効率的に抑える制振装置「トグル・スト ラット・ストリング・システム(TSSS)」を共同で開発した。橋の下端に設置した張弦梁とダンパーで上下の揺れを左右の揺れに変換し、振動エネルギーを 吸収する仕組みで、橋の揺れを9分の1に減少できる。車両通行による繰り返しの振動は道路橋の耐久性を低下させる要因の一つだが、同システムを導入すると 延命化を図れるという。 橋梁の上下振動対策は制振装置を使って構造物の変位を抑えるのが一般的だが、従来の制振装置は構造物の変位が大きくなると制振装置の効果も上がる方式の ため、小さな振動でも効率的に揺れを抑えられる新たな技術が求められていた。
トラックバック(0)
このブログ記事を参照しているブログ一覧: 地震と耐震補強
このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.hirayama.com/mt/mt-tb.cgi/305