建築の仕事とは終わりのない勉強であり、教育です
「野帳場」という言葉があります。町場の仕事と対比的に建築業界では使われています。私達建築に携わる者の仕事は大概が野帳場の仕事です。なにもない、あるいは解体すべき建物が立っている、ゼロの段階から仕事をはじめ、人々が生活し、仕事をする建物を完成させます。
ですから、野帳場という言葉に私は誇りを感じます。野帳場だからこそ、現場代理人の力量が問われます。一旦会社を出て現場に立てば、誰も頼りにせず 自分の才覚とネットワークを頼りに数千万、数億円の現場を預かることになります。「現場代理人」とは建設会社の代表者の代理であるという意味です。現場で は立派な「社長」なのです。
だからこそ、現場代理人とそれを支える会社の技術陣は施工の水準について共通の認識を持って仕事をすすめる必要があります。このため、今回2日間に 渡ってマンションの施工について、設計、施工、そしてアフターサービス部門の人間まで一同に会して同じ内容を勉強しました。「100年企業の100年住 宅」を標榜する会社なので、特にスケルトン・インフィルの技術について施工図の描き方から詳しく学びました。
講師の方は文字どおり野帳場で鍛えられた方です。侍は侍を知るといいます。今回のセミナーは実に文字どおり真剣勝負でした。各担当者も、セミナーを「聞く」というより「参加」していました。現場に情熱を持った講師だからこそ、真剣勝負のセミナーになりました。
野帳場、つまりは現場での経験と今回のセミナーのような経験を共有し、高い品質水準を共有する座学とが車輪の両輪になって現場代理人が磨かれていく のだといえます。現場を重視するあまり、勉強をしなくてもよいと思い込んでしまえば、より高い水準の施工力を知ることができません。座学ばかりで現場を知 らなくては、実際の収まりを見ることもなく、現場でこそ鍛えられる人間力、現場の力、専門の人間の間のネットワークを知ることもできません。
今回、改めて建築のお仕事とはどこまで行っても教育であり、勉強なのだと実感しました。
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